日本薬理学雑誌
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幽門結紮ラット(Shay rat)法による数種抗潰瘍薬の検定
石井 靖男藤井 祐一
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1974 年 70 巻 6 号 p. 863-869

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抄録

Shay rat(法幽門結紮潰蕩)を用いて粘膜保護剤などの緩和な抗潰瘍薬の検定法について長検討した.1)結紮時間を18時間に固定して,絶食時間を24,48,72時間と変えると時間がくなるにつれて胃液量,酸度の低下,胃液内漏出蛋白量の増加が認められた。24時間絶食では潰瘍係数が低いが穿孔率は高かった.このことから薬効判定に用いる絶食時間は48時間とした.2)薬物はmethyl methionine sulfonium chloride(MMSCl),glutamine,chlorophyll,glucose,甘草成分FM100を用いいずれも絶食期間中1日2回経口投与と結紮時十二指腸内投与の合計5回の投与を行なった結果,MMSCI 1および2g/kg,chlorophyll 1g/kgで有意の潰瘍発生抑制が認められた.3)MMSClは1g/kg5回腹腔内投与でも有効であったが,結紮時1回投与ではMMSCl,chlorophyllとも無効であった.4)MMSCl,chlorophyllともに潰瘍抑制時に著明な胃液分泌抑制,ペプシン活性阻害を示さなかった.5)MMSCl 1g/kg5回投与と単独では潰瘍の抑制を示さない用量のatropine,制酸剤,APS,FM100等と併用するといずれも抑制の相乗作用が認められた.これらの結果からShay rat法は酸分泌抑制剤,抗コリン剤のみでなく条件の設定によっては緩和な抗潰瘍薬の検定にも有効と考える.

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