日本薬理学雑誌
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新規消化性潰瘍治療剤Benexate・CDの薬効発現における包接体形成の意義
村主 教行吉田 眞里子木下 春樹広瀬 文明福田 孝代堤内 正美山田 秀雄
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1988 年 91 巻 6 号 p. 377-383

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抄録

benexate・CDは,benexateをβ-cyclodextrin(β-CD)により包接化合物とした消化性潰瘍治療剤で経口投与により胃粘膜に直接作用するといわれている.本研究では薬理作用発現における包接体形成の意義について検討した.benexate・CD,benexate,物理的混合物(benexatcとβ-CDとの等モル混合物,以下混合物と略す)を粉末のままラットに経口投与し,塩酸エタノール潰瘍発生に対する抑制効果を比較したところ,benexate単独および混合物は対照と比較して有意な抗潰瘍作用は示さなかったのに対し,benexate・CDの投与では強い潰瘍発生抑制効果が認められた.胃液のモデルである局方第一液におけるbenexatc・CD.benexateおよび混合物の溶解挙動を比較したところ,benexateのままではほとんど溶解せず,また,混合物では溶解濃度が若干上昇する程度であるのに対し,bencxate・CDは溶解直後に高濃度に溶け,その後低下して最終的には混合物の溶解度と等しい値となり,単なる混合物とは異なる溶解特性を示すことが明らかとなった。粉末投与後の胃内での溶解挙動の比較ではbenexate・CD投与後の胃液中および胃組織中のbenexate濃度は,benexate単独または混合物を投与した場合に比して高かった.以上の結果,bencxate・CDを投与すると胃液中でbcnexate・CDから遊離したbenexateの濃度は飽和溶解度以上の過飽和になり,この高濃度のbenexateによって胃組織中へのbcnexateの取り込みが増大しbenexate単独や混合物よりも強い抗潰瘍作用が発現したものと考えられた.従って,benexate・CDが単なる物理的混合物ではなく,包接体を形成していることが,その強い抗潰瘍作用発現に重要な意義をもっていると思われる.

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