1989 年 63 巻 5 号 p. 999-1007
プレニル化イソフラボンのカビによる代謝中間体を単離する目的で7-O-methyl-luteone (2)のBotrytis cinereaによる代謝実験を行った.
単離された代謝産物は,側鎖二重結合部のエポキシドを経由していると思われる環状エーテル誘導体3, 4およびエポキシドの加水分解生成物と思われるグリコール誘導体5であった.基質の5位OHはカルボニル基と強く水素結合しているため,7位OHが遊離だとほとんど一方的に6, 7の環状エーテルを生成するが, 7位OHをメトキシ基に変換すると,今度は5位OH基が環状エーテルを形成するようになり,目的としたエポキシ中間体(Fig.3, II)を確認することはできなかった.
Luteone (1)に比べて2はより容易にB. cinereaにより代謝されること,5のグリコールの不斉中心はS配置であることが明らかにされた.今回,微生物代謝産物としては,初めて光学活性体(右旋性)として単離されたジヒドロピラン型イソフラボン(3)は,反応様式からしてS配置を有すると推定された.