高分子論文集
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総合論文
コイルドコイル形成タンパク質からなるスズメバチのシルク
亀田 恒德小島 桂瀬筒 秀樹張 薔寺本 英敏玉田 靖
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2010 年 67 巻 12 号 p. 641-653

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抄録

スズメバチの幼虫がマユを作るために吐くタンパク質の糸をホーネットシルク(以下 HS と略す)という.本研究は,HS を構成している複数種のタンパク質のアミノ酸配列を解明するとともに,各々のタンパク質の構造を比較して共通性を見いだすことで,異種タンパク質どうしの分子間の結合形態を明らかにすることを目的とした.とくに,α ヘリックス分子鎖どうしを結合させる超二次構造(コイルドコイル構造)の存在と,コイルドコイル構造が HS の繊維化機構や物性に与える影響を解明することに主眼を置いた.HS を構成する 4 種類の主要なタンパク質のアミノ酸配列は,4 種間で相同性が低いにもかかわらず,分子鎖中央付近が Ala リッチ領域,分子鎖両末端付近が Ser リッチ領域という共通した特徴を有していた.また,4 種類のタンパク質は共通して Ala リッチ領域が α ヘリックスを有し,それらが互いに絡み合ってコイルドコイル構造を形成していた.さらに,HS のヒドロゲルを圧縮乾燥してフィルム状に成形(ゲルフィルム化)する過程で,コイルドコイル構造が再構成されたことから,このフィルムの延伸挙動を解析して,コイルドコイル構造の存在が HS の繊維化機構および物性に与える影響を調べた.この結果から,HS におけるコイルドコイル構造の形成意義について考察した.

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© 2010 公益社団法人 高分子学会
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