2012 年 69 巻 8 号 p. 485-492
種々のCl架橋Ru複核錯体とグルタミン酸骨格のアニオン脂質の複合化について検討した.[Ru2(μ-Cl)3(tacn)2]2+錯体とグルタミン酸骨格のアニオン性脂質L1を,水溶液中で複合化させることによって,脂質被覆型の複合体1を得た.複合体1は,ジクロロメタンに溶解させると,時間経過とともに淡色効果が表れた.透過型電子顕微鏡観察から,約6時間後にはマイクロリボンが形成されていた.さらに,12時間後にはマイクロリボンがマイクロチューブに変形していることが明らかとなった.さらに驚くべきことには,手による振とうという刺激のみで,マイクロチューブからマイクロリボンに解離し,可逆的にナノ構造を変化させることができた.この構造変化は,UV-visスペクトルの淡色効果と相関がみられた.これらの結果は,複合体中において,混合原子価錯体の配列状態とナノ構造を外部刺激によってコントロールできることを示している.