日本応用動物昆虫学会誌
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電燈照明による吸蛾類の防除
第1報 照明の効果解析とそれに及ぼす各種光条件の影響について
野村 健一大矢 慎吾渡部 一郎河村 広巳
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1965 年 9 巻 3 号 p. 179-186

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抄録

1. 電燈照明の効果内訳を検討する目的で,その一つと考えられる複眼明適応化による活動性の低下をとりあげ,アケビコノハ,オオエグリバについて研究した。明適応個体は暗黒下にあっても吸害作用が低調で,暗適応個体にくらべて活動性の低下が著しかった。
2. 明適応個体を照明すると,上記活動性の低下は一そう強調される。果樹園を照明することは,吸蛾類をこうした状態に追いこむことになり,加害軽減化に相当効果があると期待される。
3. 応用面からいえば,暗適応複眼をなるべく速かに明適応化することが望ましいが,この明適応化所要時間と各種光条件(特に波長)との関係をフィルター法など4方法によりアケビコノハ,オオエグリバなどについて実験的に検討した。その結果,波長は重要要因と認められたが,蛾の種類によって有効光色域には多少の相違が見られた。しかし総括的にみると,青色または黄色域が効率が高く,これに他の要因も考慮して実用上では黄色域の採用を提唱する。また照度も影響性が大きい(照度大なるほど効果的)。
4. 各種波長の実際的効果を比較するため,主波長の相違する5種類の蛍光燈を使用してモモ園で実験を行なった。これらの中では,黄色カラードランプ(主波長約580mμ)を使用した区が飛来数少なく,また実際の被害も軽微で最も効果が高かった。これに反しブラックライト蛍光燈は,かなり効果が劣った。このような効果差は,主として飛来・吸害蛾数の多少に起因するが,さらに果面照度(照度分布)なども関連するようで,各光源についてこれらの問題も検討した。
5. 適性光源として具備すべき条件はいろいろあるが,上述の効果のみならず二次加害種の飛来の少ないことも考慮して検討すると,蛍光燈の中では上記黄色カラードランプが最も有望視される。一方,実際面では白熱電球が多く使用されるが,これは波長とは別に光の到達性のよいことその他の理由によるもので,その実用性は決して否定されるものではない。状況によっては,白熱電球(回転燈も含めて)と黄色カラードランプとの併用も考えられよう。

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