日本作物学会紀事
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暖地の湛水直播栽培における土中点播水稲の生育特性 : 散播水稲との生育特性の差異(栽培)
吉永 悟志脇本 賢二田坂 幸平松島 憲一冨樫 辰志下坪 訓次
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2001 年 70 巻 4 号 p. 541-547

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抄録

打込み式代かき同時土中点播機を用いた水稲の安定的湛水直播栽培技術を確立するための基礎的知見を得ることを目的に,散播および点播水稲の乾物生産や窒素吸収特性を比較し,生育や収量性との関連について検討を行った.複数個体で株を形成する点播水稲は株内の個体間競合を生育初期から生じるために,散播水稲に比較して初期分げつが少なく,最高分げつ期までの乾物増加量の低下を生じた.点播水稲では,このような初期生育の抑制により最高分げつ期から穂揃い期における窒素含有率が高まったこと,幼穂分化期以降の乾物重は散播水稲との差を生じなかったことにより,幼穂分化期の窒素吸収量が散播水稲に比較して増大した.しかしながら,点播水稲は散播水稲に比較して最高分げつ期から幼穂分化期の窒素含有率の低下が大きいために,窒素吸収量の増大にともなう総籾数の増加を生じなかったものと考えられた.また,点播水稲は成熟期のLAIが大きいこと,上位葉の面積当たり窒素含有量が高く,穂揃い期の個葉の光合成速度が高いこと等により登熟期間の乾物増加量が大きいことが明らかになった.このため,登熟性に優れる点播水稲は,窒素施肥法の改善による総籾数の増加にともない,収量性の向上が可能となることが示唆された.

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