1988 年 77 巻 8 号 p. 1268-1273
九州地区で鯉による食中毒が相次いで発生した期間中(昭和51, 52年)に,鯉の胆嚢を食べて発症した急性腎不全3例を経験したが,以後本邦各地で発生した類似の症例を含めこれまでに計9例についての報告がなされている.いずれも鯉の胆嚢摂取後急性の消化器症状で発症し,入院後腎機能障害に気付かれているが, 2例を除き肝機能障害を伴ったと報告されている.自験1例が消化管出血で死亡したほかは軽快治癒しているが, 3例に透析療法が行われている.急性腎不全の直接原因についての詳細は不明であるが,鯉に因る食中毒一般に関しては,原因物質として脂溶性の化学物質(分子量575)によるものと報告されている.