2014 年 70 巻 6 号 p. II_361-II_369
生態系サービスの定量的評価は, その持続的な利用と保全に向けた重要な研究課題の一つである. 本研究は, これまで定量的に把握されてこなかった日本の里山における食料の自家消費実態を明らかにするため, 全国を対象にウェブアンケートを実施し, 豊富な自然資源を有する石川県能登半島に着目した解析を行った. その結果, 能登地方では, 「自家生産(または採集)したもの」および「近親者からのいただきもの」という市場を介さない食料が, 人々の食生活を質・量ともに豊かにしていることがわかった. また, 家庭あたりの自家消費品目数のうち, 平均で約半数が「あげる」または「貰う」という行為によって家庭外とつながっており, このような食料を介した社会的ネットワークが, 将来の里山の持続性を検討する上で一つの重要な要素であることが示唆された.