日本畜産学会報
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離乳子豚における色の識別能力
谷田 創千田 賢一郎鈴木 さと子田中 智夫吉本 正
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1991 年 62 巻 11 号 p. 1029-1034

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抄録

豚における色の識別能力の有無を明らかにするために2つの実験を行なった.
実験I:供試豚として離乳子豚2頭(ランドレース種(L)×大ヨークシャー種(W)の交雑種1頭とL種1頭)を用いた.T字型迷路を用いて,明度の等しい有彩色(赤,青,緑)を2色ずつ対比させ,子豚が正刺激側の色を選ぶと報酬として飼料を与えた.1セッションを30試行とし,左右のカードの交換は乱数表に基づいて行なった.X2検定により1セッション21試行以上の正解(P<0.05)を基準とし,その基準に3回連続して到達した時点でその色の組合せを識別したものと見なした.その結果,2頭の子豚はいずれも青と緑,青と赤を識別したが,赤と緑を識別できなかった.
実験II:供試豚として離乳子豚2頭(L×Wの交雑種1頭とデュロック種×Wの交雑種1頭)を用いた,実験Iで用いた有彩色(赤,青,緑)と,各有彩色と同明度の無彩色(灰)を対比させ,子豚が正刺激側の有彩色パネルの下に取り付けたスイッチを鼻で押すと報酬として飼料を与えた.識別判定基準は実験Iに準じた.その結果,2頭の子豚はいずれも青と灰を識別したが,赤と灰および緑と灰の組合せについては識別できなかった.以上の結果から,離乳子豚は3原色(青,赤,緑)の中で,青だけを,明度の差ではなく色として識別していることが推察された.

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