日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
地域在住高齢者における継続時間を考慮した中高強度身体活動の実態:加速度計を用いた記述疫学的研究
町田 征己高宮 朋子天笠 志保菊池 宏幸福島 教照小田切 優子井上 茂
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 55 巻 4 号 p. 584-593

詳細
抄録

目的:健康づくりのための身体活動は,主に10分以上継続し,活動強度が3 METs以上の身体活動(中高強度身体活動,MVPA)が注目されてきた.しかし近年,加速度計の普及に伴い継続時間10分未満のMVPA(細切れのMVPA)の測定が可能となり,その健康効果が示されつつある.高齢者では細切れのMVPAの方が実施しやすい可能性が考えられるが,実態は明らかでない.そこで本研究の目的は,加速度計を用いて地域在住高齢者のMVPAの実態を明らかにすることとした.方法:2015年2月に日本の3都市(東京都文京区,府中市,静岡県小山町)に居住する地域高齢者1,210名(70~80歳)に3軸加速度計の装着を依頼し,1日のMVPA実施回数と1回毎の継続時間を測定した.MVPAを継続時間で分類(1~4分,5~9分,10~19分,20~29分,30分以上)し,継続時間分類毎に合計したMVPA時間と,そのMVPA時間が1日のMVPA時間の総和(総MVPA時間)に占める割合を算出した.結果:450名(男性56.7%,年齢(平均±標準偏差,74.0±2.9歳))から有効データが得られた.解析対象者のMVPA回数は21.8±14.6回/日,1回継続時間は2.1±0.9分/回,総MVPA時間は46.5±33.0分/日であった.1回継続時間が10分以上のMVPAが総MVPA時間に占める割合は26.9±23.5%であった.一方,1回継続時間が1~4分のMVPAが総MVPA時間に占める割合は43.4%であった.結論:地域在住高齢者では1日45分程度のMVPAを行っていたが,その内訳としてWHOの現行ガイドラインでは推奨されていない細切れのMVPAが多く,特に女性,中山間地域居住者でその割合が大きかった.今後は,細切れのMVPAを実践の場でどう測定し,どう介入するのかといったことが課題と考えられる.

著者関連情報
© 2018 一般社団法人 日本老年医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top