日本森林学会誌
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総説
熱帯における森林減少の原因
—焼畑・人口増加・貧困・道路建設の再考—
宮本 基杖
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2010 年 92 巻 4 号 p. 226-234

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抄録

本稿では, 熱帯の森林減少の原因に関する近年の研究動向を整理し, とくにこれまでおもな原因として検討されてきた焼畑・人口増加・貧困・道路建設について研究の進展を概括する。「人口増加と貧困を背景に焼畑が拡大して熱帯林が減少した」という広く普及した通説は, 約20年にわたる研究成果により見直しが進んだ。農地拡大がおもな原因であることに変わりはないが, 焼畑原因説は影をひそめ, 代わって商品作物や輸出用農産物の生産拡大の影響が重要視されている。人口増加と貧困の影響については, 多くの実証研究により検証がなされたものの, 賛否両論で議論が分かれている。道路建設の影響は多くの実証研究で裏付けられており, 道路建設が森林減少を加速する仕組みについては生産物の輸送コストの低下による熱帯奥地の土地収益性 (地代) の上昇が指摘される。地代と土地利用の関係を示すチューネン・モデルが森林減少の説明に有効な概念として近年注目されているが, 他の理論で補完すべき課題もある。

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© 2010 一般社団法人 日本森林学会
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