日本透析療法学会雑誌
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鯉の胆嚢生食による急性腎不全の1例
大矢 晃山口 哲小倉 泰伸染野 敬高橋 徳男網野 洋一郎
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1990 年 23 巻 3 号 p. 261-265

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抄録

症例は46歳, 女性. 1988年10月28日鯉の生胆嚢5個を食べ, 4時間後に嘔吐, 下痢および全身倦怠感が出現した. 翌日, 近医に入院したが無尿となり, 11月1日血液透析を施行するために当院に転院となった. 入院時検査ではGOT 35IU/l, GPT 1,109IU/l, BUN 89.4mg/dl, Cr 10.5mg/dl, UA 15.6mg/dlと高度の腎・肝機能障害を認めた. 鯉の胆嚢による中毒と診断, 同日直ちに血液透析を開始した. 血液透析は11月12日までに総計9回行い離脱できた. また肝機能は11月15日までに正常化した. 12月8日に施行した腎生検では糸球体に異常所見は認められず, 急性尿細管壊死と考えられた.
本邦における鯉の胆嚢生食による中毒の報告は1977年以降に見られるようになり, 自験例が第17例目と思われた. この17例についてまとめてみると, 男性10名, 女性7名, 発症年齢は19歳から67歳で平均47.6歳であった. 生食した月別では5月が4名と最も多く, 次いで10月と12月の各3名であり, 地域別では関東甲信越 (福島, 茨城, 栃木, 新潟) と九州の一部地域 (宮崎) に限定されていた. 毒性成分については不明な点が多く, 未だに特定されていない.

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