2012 年 24 巻 139 号 p. 193-202
N型糖鎖は、様々な細胞内レクチンとの相互作用を介して、糖タンパク質の運命を決定する重要な役割を担っている。多くの細胞内レクチンは、マメ科レクチンもしくはマンノース6リン酸受容体(MPR)と相同な糖鎖認識ドメインを有している。これらレクチンはL型もしくはP型レクチンに分類される。最近、L型レクチンに加えて、フロンタルアフィニティークロマトグラフィーおよび糖鎖マイクロアレイのデータの蓄積により、P型レクチンおよびMPRと相同なドメイン(MRH)を持つタンパク質がそれぞれ異なる糖鎖結合特異性を示すことが明らかになってきた。さらに最近では、糖鎖認識メカニズムの原子レベルでの理解も進んでいる。本総説では、分泌経路においてN型糖タンパク質のフォールディング・輸送・分解を制御するP型レクチンおよびMRHドメインを有するタンパク質による糖鎖認識の分子構造基盤の知見の現状を概説する。