斜面土層の表層崩壊と密接に関係する樹木根系分布の推定手法について,現在までの研究成果を簡潔にとりまとめた。根系は土が硬くなると発達が規制されるため,根系発達を規制する土の硬さを把握できれば根系の分布状況を間接的に推定可能である。こうした土の硬さによる間接的調査手法としては,造園分野などで従来から実績を持つ山中式土壌硬度計や長谷川式土壌貫入計,および,近年,急傾斜斜面における土層厚調査用に特化し開発されたSH 型簡易貫入試験機がある。自然斜面に生育するコナラを対象にSH 型簡易貫入試験機による根系発達深さの推定精度を検証したところ, Nc'15 で根系分布が止まり,Nc'20 以上の土層では根系が分布しないという結果が得られた。この結果より,SH 型簡易貫入試験機を用いることで,長谷川式土壌貫入計などと同様に一定の判断基準によって斜面土層における根系分布状況を推定可能であると考えられた。